健康情報
50代からのストレッチと筋トレ|種目より先に「自分に合う姿勢」を確認する理由
- 公開日:
- 2026-07-02
「身体が硬いから、まずはストレッチをした方がよいのか」
「50代からは筋力も必要だと聞くけれど、何を始めればよいのか分からない」
「動画と同じフォームを意識しているのに、腰や膝など別の場所がつらくなる」
このような悩みを抱えている方は少なくありません。
ストレッチと筋力トレーニングは、どちらか一方だけを選べばよいものではありません。
大切なのは、種目を決める前に、現在の身体がどのような姿勢、範囲、負荷、テンポなら無理なく動けるのかを確認することです。
一般的に正しいとされるフォームでも、その人の身体の状態や言葉の受け取り方によっては、腰や膝など別の場所で動きを補う場合があります。
この記事では、Will Harlow氏の動画「Stretching Won’t Keep You Mobile After 60 (But THIS Will)」の内容を参考にしながら、50代からストレッチと筋力トレーニングを始める際の考え方を、MYSELFの現場経験とともに解説します。
ストレッチと筋力トレーニングは、どちらか一方を選ぶものではありません
元動画では、「柔軟性」と「可動性」の違いが説明されています。
- 柔軟性:関節がどこまで動くかという範囲
- 可動性:その範囲を自分でコントロールして動かせる能力
身体を伸ばし、関節の動く範囲を確保することは大切です。
一方で、その範囲を自分の筋力で支えながら動かせなければ、日常生活や運動の中で十分に使えない場合があります。
元動画では、2023年に学術誌『Sports Medicine』へ掲載された研究を取り上げ、関節可動域の向上について、ストレッチとレジスタンストレーニングの効果は同程度だったと説明しています。
ただし、この内容だけで、筋力トレーニングをすれば痛みが改善する、怪我を防げる、自立を維持できると断定することはできません。
また、ストレッチが不要という意味でもありません。
伸ばすこと、動かすこと、負荷に対応することには、それぞれ異なる役割があります。
ストレッチか筋力トレーニングかを先に決めるのではなく、現在の身体に何が必要なのかを確認し、必要に応じて組み合わせることが重要です。
何から始めるか迷ったら、種目より先に確認することがあります
インターネットで運動を探すと、「身体が硬い人にはこのストレッチ」「50代からはこの筋力トレーニング」といった情報が数多く見つかります。
しかし、同じ年代であっても、痛みの有無、過去の怪我、筋力、可動範囲、運動経験、動作の癖は異なります。
そのため、MYSELFでは種目を決める前に、次のような点を確認します。
- 現在、痛みや違和感があるか
- いつ頃から、どのような経過で困っているか
- どの動作、範囲、負荷で症状が出るか
- 動作に怖さや不安がないか
- 医師から運動制限を受けていないか
- 壁や手すりなどの支持が必要か
- 本人が動作を自分で止められるか
- 運動後や翌日に症状が強くなっていないか
痛みがあるからといって、すべての運動を行えないとは限りません。
一方で、その場で動けたからといって、そのまま進めてよいとも限りません。
動かす範囲、負荷、支持、姿勢、テンポなどの条件を調整し、症状や動きがどのように変わるかを確認する必要があります。
「自分に合った姿勢」は、楽な姿勢という意味ではありません
自分に合った姿勢と聞くと、「楽に感じる形なら何でもよい」と受け取られるかもしれません。
しかし、ここでいう自分に合った姿勢とは、単に楽な姿勢や好きな姿勢を意味するものではありません。
現在の身体で、痛みや不安を強めず、目的とする動きをコントロールして繰り返せる条件を指します。
確認する条件は、見た目の姿勢だけではありません。
- 動かし始める姿勢
- 動かす範囲
- 使用する重量や抵抗
- 壁、手すり、椅子などの支持
- 動作の速度
- 回数や休憩
- 種目の難易度
- 本人へ伝える言葉
同じ運動でも、支えを使うことで安定して動ける場合があります。
動く範囲を少し小さくすることで、腰や膝への負担感が変わる場合もあります。
反対に、見た目だけを理想的なフォームへ合わせようとすると、別の部位へ力が入りすぎることがあります。

ルーマニアン・デッドリフトでも、人によって伝え方が変わります
元動画では、太ももの裏側へ負荷をかけながら動く方法として、ルーマニアン・デッドリフトが紹介されています。
一般的には、膝を軽く曲げ、背中を大きく崩さず、股関節を後ろへ引くように説明される種目です。
ただし、MYSELFでは全員に同じ言葉を使用するわけではありません。
例えば、「背中をまっすぐにしてください」と伝えると、腰を強く反ってしまう方がいます。
本人は腰を反っているつもりではなく、「背中を伸ばしている」「よい姿勢を作っている」と感じている場合があります。
50代以降の方の中には、胸椎、肩甲骨周辺、肩関節などの動きが小さくなり、その動きを腰の反りで補っているように見える方もいます。
その場合、MYSELFでは腰の反りを減らすために、あえて「少し丸めてください」と伝えることがあります。
胸椎周辺の力を抜くことを目的にする場合もあれば、腰を含めた背中全体の形を一時的に調整する場合もあります。
反対に、背中全体が丸く崩れ、負荷を支えにくくなっている方には、「背中を伸ばしてください」と伝えることもあります。
つまり、「丸める」と「伸ばす」のどちらかが、全員に共通する正解なのではありません。
大切なのは、言葉を伝えた後に、次の点がどのように変わったかです。
- 股関節を後方へ引けるようになったか
- 腰だけを強く反っていないか
- 太ももの裏側を使えているか
- 痛みや怖さが出ていないか
- 同じ動きを繰り返し再現できるか
MYSELFの現場では、ヒップヒンジが苦手な方の中に、股関節を動かす代わりに腰を反り、「背中を伸ばせている」と感じている方が見られることがあります。
このような場合は、種目を変更する前に、姿勢、動く範囲、言葉の伝え方を調整します。
MYSELFでは、実施前後で同じ動きを確認します
MYSELFでは、セッションの中に動的なストレッチを取り入れることがあります。
ルーマニアン・デッドリフトやヒップヒンジのような動きを、軽い負荷や小さな範囲で行い、実施前後の動きを比較します。
確認するのは、関節がどこまで動いたかだけではありません。
- 先ほどできなかった動きが行いやすくなったか
- 同じ種目を以前よりコントロールして行えるか
- 腰や膝など別の部位で無理に補っていないか
- 動きが滑らかになったか
- 呼吸を止めずに動けるか
- 本人が動きやすさを感じているか
- 自分一人でも再現できるか
変化が見られなければ、同じ方法を続けるとは限りません。
可動範囲、負荷、支持、開始姿勢などを一つずつ変更し、反応を再確認します。
また、その場で動きやすくなったとしても、それだけで長期的な効果や痛みの改善を判断することはできません。
運動後、夜間、翌日の反応まで確認することが必要です。
自宅で行う内容は、効果だけでなく「自分で止められるか」も大切です
MYSELFでは、一般的にイメージされる、一定時間姿勢を保つストレッチをホームワークとして出すことがあります。
ただし、全員に同じストレッチ、時間、回数を指示しているわけではありません。
内容は、その人の身体の状態や生活環境によって異なります。
ホームワークを選ぶ際は、期待できる変化だけでなく、次の点も重視します。
- 本人が一人で再現できるか
- 複雑なフォーム判断を必要としないか
- どこまで動かすかが明確か
- 痛みや違和感が出たときに、自分で止められるか
- 実施後の反応を確認できるか
- 迷わず継続できる内容か
トレーニングは、姿勢、動く順番、リズム、負荷など、同時に確認する項目が多くなります。
一人で行うと、正しい姿勢や動きを忘れ、何が合っているのか分からなくなる場合があります。
迷いが大きくなると、運動そのものをやめてしまうことにもつながります。
そのため、MYSELFでは、本人が異常や不安を感じた段階で中止しやすく、一人でも再現しやすい内容をホームワークとして選ぶことがあります。
これは、一定時間姿勢を保つストレッチであれば、必ず安全という意味ではありません。
どのような運動でも、本人の状態と実施条件を確認する必要があります。
動画を見れば、全員が同じように動けるわけではありません
MYSELFでは過去に、「MYSELFアカデミー」という運動動画のコンテンツを制作し、公開したことがあります。
しかし、利用した方から「動画を見ても正しくできない」「自分のやり方が合っているのか分からない」という声をいただきました。
動画の内容が間違っていたという意味ではありません。
同じ説明を見ても、身体の状態、過去の運動経験、言葉の受け取り方によって、実際の動きが異なったということです。
この経験から、方法を一律に伝えるだけでは、全員が安全に再現できるとは限らないと考えるようになりました。
現在は、種目を先に決めるのではなく、一人ひとりの動きを確認し、必要な条件を調整することを重視しています。
50代からの運動は、現在できる条件から始めます
50代だから、難しい運動を避けなければならないわけではありません。
一方で、年齢に関係なく、現在の痛み、過去の怪我、筋力、可動範囲、動作の癖を無視して進めることもできません。
MYSELFでは、評価結果に基づいて必要な運動を選びます。
最初から理想的な可動範囲や高い負荷を目指すのではなく、安全に再現できる条件を開始地点にします。
- 現在の痛みや動きを確認する
- 動かす範囲や姿勢を調整する
- 必要に応じて壁や手すりなどの支持を使う
- 小さな負荷とゆっくりした動きから始める
- 実施後と翌日の反応を確認する
- 問題なく再現できれば、少しずつ条件を進める
ほぐす、伸ばす、動かす、鍛えるという段階も、全員が同じ順番、同じ期間で進むわけではありません。
その日の身体の状態や、取り戻したい動作に合わせて選びます。

痛みや違和感がある場合に注意したいこと
この記事は、病名や痛みの原因を診断するものではありません。
痛みがある方も対象にしていますが、記事だけを見て運動の可否を判断することはできません。
次のような状態がある場合は、自己判断で新しい運動を進めず、必要に応じて医療機関などへ確認してください。
- 新しく生じた、または悪化している強い痛み
- 安静時や夜間にも強い症状がある
- 新しいしびれや感覚の変化がある
- 急激または進行している筋力低下がある
- 最近、手術や大きな外傷があった
- 医師から受けている運動制限や再開条件が分からない
- 通常とは異なる息苦しさ、胸部の不快感、強いめまいなどがある
運動中に痛み、違和感、怖さ、息苦しさなどを感じた場合は、我慢して続けないでください。
範囲や負荷を変更しても反応が変わらない場合は、その運動を一度止める判断も必要です。
まとめ
50代からのストレッチと筋力トレーニングは、どちらか一方を正解として選ぶものではありません。
大切なのは、種目を増やす前に、現在の身体がどのような条件なら無理なく動けるのかを確認することです。
同じルーマニアン・デッドリフトでも、「背中を伸ばす」という言葉が合う人もいれば、腰の反りを減らすために「少し丸める」という言葉が必要な人もいます。
どちらか一方が全員に共通する正解ではありません。
姿勢、可動範囲、負荷、支持、テンポ、言葉の伝え方を調整し、その後の動きや身体の反応を確認します。
理想的な形へ無理に身体を合わせるのではなく、今の身体がコントロールできるところから始める。
何から始めればよいか分からないときは、新しい種目を探す前に、自分の現在の動きを確認することが最初の一歩になります。
身体について何から始めればよいか分からない方へ
MYSELFの評価は、理想的な姿勢と比較して身体の欠点を並べるためのものではありません。
今の身体がどこまで無理なく動けるのかを確認し、その人が望む生活へ向かうための出発点を決めるために行います。
病名や痛みの原因を診断するのではなく、安全に運動を開始できるか、何を優先するか、どの条件から始めるかを判断します。
確認する項目
- 現在、身体について何に困っているか
- 生活の中で何がやりにくくなったか
- 取り戻したい具体的な行動
- 現在の可動域や身体のコントロール
- 代償動作
- 安全に運動を開始できる範囲
- 今、優先すること
- まだ行わない方がよいこと